簿記を勉強し始めたけど仕訳が苦手・・・
今回は仕訳のコツと勉強法を解説します!
- 簿記の仕訳で苦戦する理由を解説
- 仕訳の苦手を克服する方法を解説
- 仕訳の勉強方法を解説
<プロフィール>
- 日商簿記1級をはじめて受験したときは81点、足切りで不合格
- 高校卒業後に公認会計士試験を目指して受験に専念
- 当時最年少で公認会計士試験に一発合格
- 公認会計士試験の会計学をトップで合格
本記事を書いている私は公認会計士試験の会計学(簿記)をトップの成績で合格している簿記のプロフェッショナルです!
- 簿記の勉強を始めたばかりの人
- 簿記の勉強中だが伸び悩んでいる人
- 仕訳が苦手な人
- 仕訳を書くのに時間がかかる人
仕訳とは?
仕訳(しわけ、英: journaling)とは、複式簿記において、発生した取引を貸借の勘定科目に分類することである。
wikipedia
本記事にたどり着いた方は大半が簿記を学習中の方だと思いますが、簿記を習い始めて一番最初に覚える専門用語が「仕訳」です。
つまり仕訳は簿記の根幹を成す基本であり奥義です。
なぜ仕訳は難しく、時間がかかるのか?
簿記を勉強していく中で「時間が足りなくて問題が解ききれなかった」という経験をした方は多いのではないでしょうか。
問題が解ききれない最大の原因は仕訳を書くのに時間がかかるからです。
つまり仕訳さえすぐに書ければ日商簿記は3級、2級はもちろん、1級でさえ時間に余裕をもって回答できます。
事実私は日商簿記1級に合格したときは、見直しを終えても10分ほど時間が余ってしまい最後はぼーっとしてました。
また仕訳を書くのに時間がかかると、時間が足りずに焦ってしまいつまらないケアレスミスをしてしまったり、見直しの時間が足りずに間違えてしまうなどの悪循環に陥りがちです。
つまり仕訳を早く正確に書けるようになることが簿記合格への近道なのです。
では、なぜ仕訳を難しいと感じ、書くのに時間がかかるのか?
大きな理由は3つあります。
- 勘定科目がわからない
- 借方と貸方がわからない
- 計算方法がわからない
勘定科目がわからない
仕訳を書くのに時間がかかる最大の理由のひとつはこの「えーっと・・・」です。
日商簿記2級の第1問は5つの仕訳問題が出題されます。1つの問題につき勘定科目は最低2つ使うので、少なくとも10個の勘定科目を利用します。
仮に1つの勘定科目を思い出すのに30秒使っていたら、それだけで300秒使います。あっという間に5分経過です。
「1つの勘定科目を思い出すのに30秒も使わないよ」と思わないでください。実は悩んでるときは時間があっという間に過ぎています。1つの勘定科目を思い出すのに1分使うことも珍しくありません。
借方と貸方がわからない
使用する勘定科目がわかっても、貸借がわからなくなることは簿記を勉強するうえで誰しもが通る道です。
しかしこの貸借を悩んでいる時間も、勘定科目を悩んでる時間と同様、かなりの時間を使っています。
計算方法がわからない
計算方法に悩んでいる時間も仕訳を書くのに時間がかかる要因のひとつです。
特に計算方法はあとで「あ、違う!」となって気づいて、計算をやり直したことは誰しもが経験あると思います。
計算のやり直しがかなりのタイムロスになることはもはや説明不要でしょう。
仕訳をマスターし、早く書くためには
仕訳を書くのに時間がかかる理由を3つ解説しました。
では、仕訳を早く書くためにはどうすればよいか? 解説していきます。
- 勘定科目を覚える
- 計算方法を覚える
勘定科目を覚える
また日商簿記2級と3️3級の第1問では勘定科目の選択肢が用意されていますが、選択肢を見なくても答えられるようになるのは最低限のノルマになります。
例題を見てみましょう。
12 月 12 日に満期まで保有する目的で愛媛産業株式会社発行の社債(額面総額 ¥ 100,000,000)、利率年 0.2 %、利払日は 3 月末日および 9 月末日)を額面 ¥ 100 に対し ¥ 99 で取得し、代金は証券会社に支払っ た手数料 ¥ 200,000 および端数利息(1 年を 365 日とする日割計算による)とともに、普通預金口座から支 払った。
日商簿記2級サンプル問題2より抜粋
読んだ瞬間に勘定科目が頭に浮かびますか?
また具体的にどこを読んだ時点で勘定科目が頭の中で浮かんだか考えてみてください。
私であれば以下のタイミングで勘定科目がわかります。
- 「満期まで保有する」→満期保有目的債権を借方、有価証券利息を借方
- 「取得し」→預金関係の科目
- 「普通預金口座から支払った」→普通預金を貸方
もっと言うと満期まで保有と書かれた時点で「満期保有目的債権の取得」か「利息の計算」か「償還」のどれかだなとまで考えてます。
そして「取得し」の文言で取得であると認識し、あとは支払い方法が普通預金なのか当座預金なのか等々の現預金の勘定科目を確認しただけです。
また端数利息の説明と手数料の説明は勘定科目を考えるうえでは全く気にしてません。
取得とわかった瞬間に手数料は取得価額に含まれるので勘定科目を考える必要は一切ありませんし、端数利息は満期保有目的債権なら絶対に出てくるので問題を読むまでもありません。
さて、今この記事を読んでる皆様。
勘定科目を考えるうえで、ここまでの整理が一瞬で浮かびますか?
ここまでの整理が浮かんだら完璧です。
計算方法を覚える
勘定科目と違い、単に計算方法の公式が頭に浮かべばよいのではなく具体的な計算式までが瞬時に頭に浮かぶ必要があります。
先ほどと同じ問題で解説します。
12 月 12 日に満期まで保有する目的で愛媛産業株式会社発行の社債(額面総額 ¥ 100,000,000)、利率年 0.2 %、利払日は 3 月末日および 9 月末日)を額面 ¥ 100 に対し ¥ 99 で取得し、代金は証券会社に支払っ た手数料 ¥ 200,000 および端数利息(1 年を 365 日とする日割計算による)とともに、普通預金口座から支 払った。
日商簿記2級サンプル問題2より抜粋
読んだ瞬間に計算方法が頭に浮かびますか?
また具体的にどこを読んだ時点で計算方法が頭に浮かびますか?
私であれば以下のタイミングで計算式が浮かびます。
- 「額面総額¥100,000,000を額面¥100に対して¥99」
取得価額は100,000,000×0.99
(満期保有目的債権は大半が額面¥100円なので、0.99や0.98等で計算してます) - 「12月12日」「利率年0.2%」「日割計算」
利息は100,000,000円×0.2%×(31日+30日+12日)÷365日
日付は毎回足してます。電卓の機能もありますが、両端入れとか考えるのがめんどくさくなって自分で足すのが癖になりました。 - 「手数料¥200,000」
取得価額に足す - 「普通預金口座から」
最後に全部足す
満期保有目的債権の取得価額の計算式や有価証券利息の計算式の公式をいちいち頭に浮かべることはありません。
また勘定科目を思い浮かべながら計算式も同時に浮かんできています。
説明の都合上、分けて解説していますが実際は勘定科目と計算式はほぼ同時に浮かんできています。
筆者の実例
では、私が実際に今回の例題で仕訳を書くときにどのような手順で書いているか具体的に説明していきます。
問題文の読み方、頭の中、手の動かし方のすべてを説明します。
12 月 12 日に満期まで保有する目的で愛媛産業株式会社発行の社債(額面総額 ¥ 100,000,000)、利率年 0.2 %、利払日は 3 月末日および 9 月末日)を額面 ¥ 100 に対し ¥ 99 で取得し、代金は証券会社に支払っ た手数料 ¥ 200,000 および端数利息(1 年を 365 日とする日割計算による)とともに、普通預金口座から支 払った。
日商簿記2級サンプル問題2より抜粋
具体的には「満期保有目的債権の取得」「端数利息あり」「手数料あり」「支払いは普通預金」を把握する
借方に満期保有目的債権と有価証券利息、貸方に普通預金
100,000,000円の額面100円に対して99円なので100,000,000円×0.99という計算式を頭に浮かべる
ケアレスミスにつながるので簡単そうでも絶対に暗算はしない
99,000,000円に手数料の200,000円を足して99,200,000円。これを満期保有目的の借方金額として回答
先に日付計算。利払日が9月末なので、10月スタートで31日+30日+12日=73日を計算し、M+を押す(メモリに保存)
100,000,000円×0.2%×73日÷365日で計算。
電卓では100,000,000×0.002×MR÷365の順番で叩く。
パーセント機能は基本使わない(これは純粋な好みで深い意味はないです)。
トータルで3分もかからないと思います。
ちなみに一番時間がかかっている箇所は「満期保有目的債権」を一文字一文字書いているときです。
勘定科目が選択式の場合は、選択肢を探している時間が一番長いと思います。
上記は私のやり方ですので、人によって好みややり方に差はあると思いますが私個人は上記が一番早く正確に解ける方法だと信じています。
他の問題であっても、細かい差異はありますが基本的に上記の流れで解いています。
仕訳をマスターするための勉強方法
ここまで説明してきたように仕訳を難しく感じたり、書くのに時間がかかるのは勘定科目と計算方法がわからないからです。
つまり言い換えれば勘定科目と計算方法をマスターし、問題を読んだ瞬間に反射で出るようになれば仕訳は楽勝です。
そのためには勘定科目や計算方法を覚える必要があります。
単に名前や計算の公式を覚えればよいわけではありません。私が思う勘定科目と計算式を覚えたとは以下のすべてを覚えた状態です。
- 勘定科目の名称
- 資産、流動資産などの分類
- その勘定科目はどのような取引で使うのか
- 勘定科目の計算方法は
最低限、この4つは必須です。
で、結局仕訳をマスターするためには結局どんな勉強をすれば良いの?
では具体的な勉強方法を説明します!
勘定科目はBSとPLから覚える
例えば前払費用は流動資産で、前受収益は流動負債で・・・と英単語を覚えるように覚えている人は少なくないと思います。
勘定科目をひとつひとつ覚えるのはいますぐ辞めましょう。非効率です。
覚えるべきはBSとPLです。
各勘定科目がBSのどこに載っているのか、PLのどこに載っているのかが重要です。
そのため勘定科目を覚えたいと思ったら、BSやPLを見てひとつひとつどの科目がどこに載っているのか覚えていきましょう。
また丸暗記しても仕方ありません。仕訳問題を解いたら、仕訳で使った科目がBSやPLのどこに載ってくるのか、都度都度BSやPLを見直してみると良いでしょう。
なお、簿記会計をマスターした人であれば、流動資産は当たり前のように現預金、売掛金、商品という順番で話しますし、有形固定資産なら建物、建物附属設備の順番で説明します。
また簿記を勉強している方は今現在や将来、経理や会計関係の仕事に就こうとしている人が多いと思います。
経理部内では仕訳で説明しますが、経理部外で説明する場合は大半が「BSの資産が増える」や「営業利益が減る」等のBSやPLの結果から説明することが大半です。
だからこそ、勘定科目そのものを覚えるだけなのは実にもったいないです。
勘定科目を使って仕訳を切り、最終的にBSとPLのどこに反映されるのかを意識して勉強することが重要です。
借方と貸方という言葉は使わない
そもそもなぜ左が借方なのか、右が貸方なのかという理由もよくわからないですし借入金は負債だから貸方に残高があるとか慣れるまでは混乱するだけですので、もう左と右でいいです。
多分借方や貸方という単語をしっかり使わないと答えられない問題はほとんどないと思います。
私はこのブログを書くうえではさすがに借方貸方と書いてますが、普段の仕事では左と右と言っています。むしろ左右すら言わないときが多いです。
現預金を基準に覚える
資産が増えるときは借方、収益が増えるときは貸方・・・という会計のお約束は簿記初学者を悩ませる関門のひとつです。
このルール、ほぼ覚える必要はありません。
唯一現預金が増えるときは借方、減るときは貸方だけおぼえてください。
入金時が借方、支払時が貸方と覚えてもOKです。
例えば建物が増えるときは現預金を払うとき、つまり現預金が減るときです。ですので現預金は貸方になります。つまり建物は借方にすればOKです。
他にも売掛金は期限が来れば入金されます。そのため売掛金が減るときは現預金が借方に来ますので、減るときは貸方です。逆に増えるときは借方です。
負債も同様です。
借入金が増えるときはまず現預金が入金されますので、現預金が借方となり、借入金は貸方となります。
買掛金は期限が来れば支払う必要がありますので、買掛金が減るときは現預金が貸方に来ますので、減るときは借方です。逆に増えるときは貸方です。
都度考えるため、多少時間はかかりますが少なくとも忘れることはありません。
慣れてくれば考えなくてもできるようになります。
勘定科目は略さない
世の中の簿記の勉強法では勘定科目を略することを推奨したり、略し方の紹介がはびこっていますが、私は非推奨です。
正式名称をきちんと理解もしていない状態で略し方だけ先に覚えてしまうのは小手先のテクニックに過ぎません。
まずは正式名称をしっかり覚えましょう。問題を解くときもしっかり正式名称で書きましょう。工具器具備品減価償却累計額などの長ったらしい勘定科目も頑張って書きましょう。
もちろん試験本番や試験本番を想定した模試では略することで利用時間を少しでも縮めるのはありです。
いま行っている勉強が試験の練習なのか覚えるため理解するための勉強なのかを自分のなかでしっかりと意識して勉強を進めましょう。
本を読む
特に簿記の総合問題は決算修正項目が10項目ぐらいありますので、まず問題文を読むのが大変です。
そのため日本語を読む練習が実は重要です。
日本語を読む練習で一番手っ取り早いのは本を読むことです。
勉強や練習とはあまり考えず、シンプルに読みたい本を読めばよいです。
結局は数をこなすしかない
特に計算はとにかく練習することで早さと正確さを向上していくしかありません。
ここまで計算方法の勉強法を書いていないのは、計算の勉強のためにはとにかく練習するしかないからです。
各テキストで「なぜこのような計算をするのか?」という説明はあると思いますが、もし解説がわからなければ公式を先に覚えてしまうのも手です。何度も練習していくとある日突然計算方法の理由がわかるようになります。
結局は練習するしかありません!
仕訳を書く際の小技
ここまで勉強方法を紹介してきましたが、最後に仕訳を早く書くためや理解をするための小技をご紹介します。
収益は少なく、費用は多く
このルールは覚えておくと地味に使えます。
簿記初学者を苦しめる単元に「商品の発送費用」があります。
仕入れた際に発送費を自社負担する場合は原価にいれるのに、売上げた際の発送費が先方負担になった場合に売上に入れないという、仕入と売上で処理が異なる会計処理は初学者を惑わせます。
これも「収益は少なく、費用は多く」というルールを知っておけば迷うことなく処理ができます。
ぜひ覚えておくと良いでしょう。
まとめ
- 仕訳で大事なのは勘定科目と金額
- 勘定科目はBSとPLから
- 現預金を基準に覚える
- 最後は数をこなすしかない
色々書きましたが、仕訳を覚えるためにはとにかく数と量をこなすことが一番の近道です。
しかしただひたすらに問題を解くだけでは効果が薄いです。本記事で解説したことを少しでも意識して問題を解きまくってください。
数カ月後に劇的な進化をしていると思います。
では、今回はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました!