日商簿記1級を独学で勉強します! 合格できる?
日商簿記1級を独学で合格できる人の特徴を解説します!
- 日商簿記1級に独学で合格できる人の特徴を解説
- 日商簿記1級を独学で勉強することのメリット、デメリットを解説
- 日商簿記1級を独学で合格するための勉強法を解説
<プロフィール>
- 日商簿記1級をはじめて受験したときは81点、足切りで不合格
- 高校卒業後に公認会計士試験を目指して受験に専念
- 当時最年少で公認会計士試験に一発合格
- 公認会計士試験の会計学をトップで合格
本記事を書いている私は日商簿記1級を2回目の受験時に91点で合格しています!
- 日商簿記1級を独学で勉強するか迷っている人
- 日商簿記1級を受験するか迷っている人
- 日商簿記2級に合格した人
日商簿記1級に独学で合格できる人は勉強に慣れている人!
一般的に難関と呼ばれる高校や大学の受験経験、日商簿記1級と同等レベルの難易度の資格試験に挑戦した経験が必要です。
具体的にどの程度の難関であればよいかは日商簿記1級の偏差値67前後が目安となります。
参考:難関資格ランキング:日商簿記検定
そのため高校や大学であれば偏差値67前後の学校、資格試験で言えば中小企業診断士、電気主任技術者1種、ネットワークスペシャリスト試験等の勉強経験が必要です。
参考:難関資格ランキング
なお、あくまで必要なのは勉強の「経験」であって合否については問いません。
なぜ勉強に慣れている必要があるのか?
そのため、過去に難関と呼ばれる試験の経験がない人がいきなり独学で挑戦しても、勉強の方法、モチベーションの維持、スケジュール管理等が十分に行えずに挫折する可能性が非常に高いです。
日商簿記1級は難易度の高い試験と言われていますが、具体的には大きく2つの要因があります。
- 試験範囲が広い
- 合格率が低い
試験範囲が広い
日商簿記1級は簿記2級と比べると試験範囲が一気に増えます!
商業簿記&会計学で増える内容
- 有価証券
- 約定日基準、修正受渡基準
- 貸付、借入、差入、預り、保管
- 売買目的有価証券の総記法による処理
- 満期保有目的債券の償却原価法の利息法
- その他有価証券の保有目的の変更
- その他有価証券評価差額金の部分純資産直入法
- 発行商品券等
- 手形
- 不渡手形の貸借対照表表示方法
- 買戻・遡及義務の計上・取崩
- 貸倒引当金
- 債権の区分、財務内容評価法、キャッシュ・フロー見積法
- 退職給付引当金
- 退職給付債務の計算
- その他の引当金
- 商品売買
- 総記法
- 仕入割引・売上割引
- 売価還元原価法など
- 収益認識基準
- 割賦販売(取戻品の処理を含む)
- 工事契約
- 重要な金融要素
- 契約変更
- 本人と代理人の区分
- その他の様々な財またはサービスの顧客への移転
- デリバティブ取引、その他の金融商品取引(ヘッジ会計など)
- 有形固定資産
- 割賦購入(利息部分を利息法で区分する方法)
- 圧縮記帳(積立金方式)
- 資産除去債務の資産計上
- 減価償却費の級数法、総合償却、取替法
- 無形固定資産
- 受注製作のソフトウェア
- 市場販売目的のソフトウェア(見込販売収益および見込販売数量の見積りの変更含む)
- 固定資産の減損
- 投資不動産
- 繰延資産
- リース取引
- ファイナンスリース取引の借手側の処理利息法、級数法
- ファイナンスリース取引とオペレーティングリースの貸手側の処理
- セール・アンド・リースバック取引など
- 外貨建取引
- 為替予約の独立処理
- 為替予約の振当処理の予約差額の期間配分
- 外貨建ての財務活動
- 資産除去債務
- 税効果会計
- 回収可能性の検討
- 引当金、減価償却、その他有価証券以外のすべての一時差異(2級はこの3つのみ)
- 会計上の変更および誤謬の訂正
- 株主資本等変動計算書
- 株主資本およびその他有価証券評価差額金以外の増減(2級は株主資本とその他有価証券評価差額金に限定)
- 財務諸表の注記・注記表
- 附属明細書
- キャッシュ・フロー計算書
- 中間(四半期)財務諸表、臨時決算
- 純資産
- 減資、現物出資、株式移転、株式償還、株式分割
- 税法上の積立金の処理
- 分配可能額の算定
- 自己株式、自己新株予約権
- 組織再編
- 株式交換、株式移転
- 事業分離等、清算
- 社債
- 発行
- 利払
- 期末評価(利息法、定額法)
- 新株予約権、ストック・オプション
- 本支店会計
- 在外支店財務諸表の換算
- 内部利益が付加されている場合の決算手続
- 連結会計
- 子会社の支配獲得時の資産・負債の時価評価
- 支配獲得までの段階取得
- 子会社株式の追加取得、一部売却
- 持分法
- 連結税効果
- 在外子会社の換算
- 個別財務諸表の修正(退職給付会計等)
- 包括利益、その他の包括利益
- 連結キャッシュフロー・計算書
- 中間(四半期)連結財務諸表の作成
- セグメント情報等
- 会計基準及び企業会計に関する法令等
- 企業会計原則および企業会計基準など
- 会社法、会社法施行規則、会社計算規則及び財務諸表規則などの法令
- 財務会計の概念フレームワーク
工業簿記&原価計算で増える内容
- 原価
- 支出原価と機会減価
- 管理可能費と管理不能費
- 特殊原価概念
- 原価計算
- 特殊原価調査
- 材料費計算
- 棚卸減耗費の引当金処理
- 経費計算
- 複合費の計算
- 製造間接費計算
- 営業外損益法
- 補充率法
- 繰延法
- 部門費計算
- 純粋の相互配賦法
- 階梯式配賦法
- 複数基準配賦法
- 個別原価計算
- 代品の製造指図書を発行する場合
- 補修または代品の指図書を発行しない場合
- 仕損費を間接費とし、仕損の発生部門に付加する方法
- 作業くずのしょり
- 総合原価計算
- 純粋先入先出法
- 工程別総合原価計算の非累加法
- 加工費工程別総合原価計算の方法と記帳
- 正常仕損費&正常減損費の非度外視法
- 異常仕損費と異常減損費の処理
- 副産物の処理と評価
- 連産品の計算
- 標準原価計算
- 修正パーシャルプラン
- 減損と仕損
- 配合差異と歩留差異
- 営業外損益法
- 補充率法
- 繰延法
- 標準の改定
- 原価・営業量・利益関係の分析
- CVPの感度分析
- 多品種製品のCVP分析
- 全部原価計算の損益分岐点分析
- 原価予測の方法
- スキャッター・チャート法
- 回帰分析法
- 直接原価計算
- 直接標準原価計算
- 価格決定と直接原価計算
- 直接原価計算とリニアー・プログラミング
- 事業部の業績測定
- 営業費計算
- 営業費の分析
- 差額原価収益分析
- 業務的意思決定の分析
- 構造的意思決定の分析
- 戦略の策定と遂行のための原価計算
- ライフサイクル・コスティング
- 品質原価計算
- 原価企画・原価維持・原価改善
- 活動基準原価計算
例えば簿記のテキストで有名なスッキリわかるシリーズはテキストと問題集が合計8冊あります。
日商簿記2級ではテキストと問題集で2冊だったので単純に考えても試験範囲は4倍です。
試験範囲が広いということは、試験日までの勉強スケジュールをしっかり決めて効率的な勉強を行う必要があります。
勉強経験が少ない人が勉強スケジュールを立てて、スケジュール通りかつ効率的な勉強を行うハードルはかなり高いものがあります。
合格率が低いから
日商簿記1級の実際の合格率はおよそ5%です!
公式に発表されている日商簿記1級の合格率は概ね10%です。
しかし実際は5%程度と思ってください。
なぜなら、合格者のおよそ半分は公認会計士か税理士の勉強を行っている人で、彼らからすれば日商簿記1級は正直言って楽勝です。
私も日商簿記1級は2回目の受験で合格しましたが、当時は公認会計士の勉強が中心でした。
そのため日商簿記1級の勉強は試験の2日前に過去問を解いたぐらいで勉強時間としては5,6時間です。
それでも91点で合格しましたし、試験中は20分ほど時間を余らせました。
つまり合格者の半分が公認会計士か税理士受験生だと考えると、日商簿記1級の合格率はたったの5%程度しかありません。
どうしても独学で受かりたい人に必要な2つのこと
- 約1,000時間の勉強時間
- 約1年間の勉強期間
もちろん「絶対に合格する」というモチベーションや勉強をやり抜く覚悟も必要です。
しかし、すでに解説したように日商簿記1級は試験範囲が広く、必要となる勉強時間は膨大になります。
そのため何よりも必要なのは勉強時間と勉強期間の確保となります。
約1,000時間の勉強時間を確保
独学で必要な勉強時間は約1,000時間!
一般的に日商簿記1級に必要な勉強時間は2級合格レベルに達している人で500時間~1,000時間と言われてます。
私はあまり優秀な方ではなかったので、簿記2級には合格していたものの、毎日スクールに通学しながら勉強を繰り返し、約750時間で日商簿記1級の合格レベルになりました。
独学で勉強する場合はスクールに通った場合と比べると勉強が非効率になり勉強に必要とする時間が増えます。
そのため、独学で勉強する場合は簿記1級の合格に必要な勉強時間の最大値に近い約1,000時間の勉強時間は覚悟する必要があります。
約1年間の勉強期間を確保
1,000時間勉強するためには、約1年間の勉強期間が必要です!
1,000時間を12ヶ月で割ると約83時間となります。
1ヶ月は30日ですので、83時間÷30日で=2.7時間と毎日3時間近くの勉強時間が必要になります。
しかし独学で合格を目指している人は社会人や学生等、本業がある人がほとんどですので毎日3時間の勉強時間を確保することは簡単ではありません。
例えば平日は1日1時間勉強し、土日は1日8時間勉強すれば毎日3時間勉強するのと同じ勉強時間になります。
平日1日1時間、土日1日8時間の生活を1年間送ってようやく1,000時間です。
そのため1年間は勉強漬けとなる必要があります。
日商簿記1級を独学で勉強することのメリット・デメリットは?
日商簿記1級を独学で勉強することにはメリットもデメリットもあります。
- 費用が安くなる
- 達成感は大きい
- 勉強時間が多くなる
- わからないときに質問する相手がいない
メリット
日商簿記1級はスクールを利用すると、最低でも10万円近くの費用がかかります。
独学であればテキストを購入すれば良く、テキストは一通り揃えても2万円程度となります。
日商簿記1級のスクール費用は高く、費用面を考えれば独学のほうが圧倒的に良いです。
また日商簿記1級の独学合格はかなりすごいです(私ならムリ)。
合格したときの達成感はスクールに通ったときよりも圧倒的に大きいと思います。
デメリット
日商簿記1級は内容自体の難易度も上がるため、理解に苦戦することも少なくありません。
しかし、独学の場合はわからないことを質問する相手がいないため質問もできません。結果として誤った理解をしてしまうおそれもあります。
どうしても独学で受かりたい人の勉強方法
日商簿記1級に独学で合格したいに向けて、科目別の勉強方法を解説します。
日商簿記1級は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4つの科目に分かれます。
それぞれ25点満点で合計70点以上で合格となりますが、各科目が10点未満だと足切りで不合格になります。
そのため4つの科目で苦手科目を作ることは許されず、どの科目もまんべんなく勉強する必要があります。
詳細な勉強方法はぜひ関連記事をご覧ください。
商業簿記
簿記は仕訳に始まり、仕訳に終わります。
独学の場合は特に仕訳を確実にマスターすることが合格への近道です。
どのような問題文、問題パターンであっても仕訳を切り、切った仕訳を集計できれば満点さえ狙えます。
会計学
- 専門用語と注記などの開示関係は暗記する
- 暗記すべき項目は過去問の内容に限定する
会計学は商業簿記と内容が被っているものが多いですが、一番の違いは理論問題が出題されることです。
そのため、専門用語や商業簿記では勉強しない開示関係の問題に対応するために暗記が必要となってきます。
しかし簿記の専門用語の量は膨大であり、すべてを覚えることは不可能です。
スクールに通っている場合は覚えるべき用語等を教えてもらえますが、独学では覚えるべき用語を自分で判断するしかありません。
その際に頼りになるものは過去問です。
過去問で問われた用語は確実に正答できるように暗記しましょう。
過去問で出てきたことのない用語が出た場合は諦めるしかありません。
工業簿記
商業簿記は仕訳ですが、工業簿記は図に始まり図に終わります。
図とは
- 勘定連絡図
- シュラッター図
- 差異分析のボックス図
等が代表例です。
工業簿記は図さえマスターすれば、独学でも高得点が狙える科目のため、独学の場合、工業簿記は特に重要視すべき科目です。
原価計算
原価計算は工業簿記とはまったく違う科目と思ってください。
工業簿記は製品の製造原価を計算、記帳して終わりですが、原価計算は計算結果を使って「より儲かるにはどうすればよいか」を考える科目です。
ここで言う儲かるとは「利益を最大にすること」であり、そのためには
- 売上を増やす
- 原価(費用)を減らす
しかありません。
- 売上を増やすにはどうすればいいか?
- 原価をへらすにはどうすればいいか?
この2つを常に考えながら勉強を進めることが重要です。
独学に限界を感じたら
スクールに通いましょう!
日商簿記1級の独学合格は決して不可能ではありません。
しかし独学の合格のハードルが高いのは間違いないため、独学で勉強した上で「ムリだ・・・」と感じたのであればスクールを利用しましょう。
おすすめのスクールは?
私の一押しは
- 大原
- クレアール
- スタディング
の3つです。
大原
- 2021年の簿記1級合格者は247名と実績は十分
- 経験豊富な専任講師からの指導
- 費用はやや高め
\ 資料請求はこちらから!/
大原は古くから簿記の講座を開講しており、実績や知名度は文句なしです。
また大原は他のスクールと異なり、母体が学校法人です。
そのため講師は正真正銘の先生ですので、まさに教えることに特化した組織と言えるでしょう。
私も簿記・公認会計士の講座はすべて大原の講義で取得しています。
一方で大原の講座の欠点としてお値段が若干お高めです(2022年10月時点)。
講座 | 教室通学 | 映像通学 | Web |
---|---|---|---|
1級合格コース | 178,700円 | 178,700円 | 146,500円 |
クレアール
- 非常識合格法を使った効率的な勉強
- 価格はお安め
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クレアールの最大の特徴は「非常識合格法」です。
長年の受験指導のデータに基づいた「試験に出やすい」「試験に出る可能性がある」範囲、すなわち基本をしっかりと押さえれば簿記検定試験は合格が可能です。クレアールでは皆さんの「簿記検定試験合格」に照準を当て、ムダな部分を徹底的に省いて確実に合格を狙う学習指導を行います。
クレアール独自の「効率的学習法」非常識合格法
効率的な勉強という点ではクレアールは他の追従を許さないでしょう。
また、通信制のスクールにしては珍しく担任制を採用しており質問体制も十分です。
通信制ということもあり料金も大原に比べれば安価です(2022年10月時点)。
講座 | 価格 |
---|---|
1級講義パックWeb通信 | 89,760 円 |
1級ストレートフルパックWeb通信 | 98,600 円 |
スタディング
- 授業風景の録画ではなく、動画としての教材を作っているので動画がわかりやすい
- スマホで勉強できるのでスキマ時間を使いやすい
- オススメ3つの中で最安値
- 質問に回数制限がある(追加質問は有料)
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スタディングは解説動画がかなりわかりやすい点がおすすめポイントです。
簿記のスクールの動画は通常の講義を録画しただけの動画が多いのですが、スタディングは動画も教材と考え、テキストなしでも理解できる動画を作っています。
スマート問題集といってオンラインの問題集が用意されているのでスキマ時間にスマホを使って1問だけ問題を解く等の勉強ができる点もオススメです。
スタディングは質問ができない体制だったため、日商簿記1級ではおすすめできなかったのですが、1級のみ質問が可能です。
ただし回数制限があるため、少し好みがわかれるところです。
また、好みの問題ですがテキストがWebのみ(紙のテキストがない)点も人によってはマイナスポイントかもしれません。
オンラインに特化しているだけあって価格もオススメ3つの中ではもっとも安いです(2022年10月時点)。
講座 | 価格 |
---|---|
簿記1級合格コース | 61,100円 |
まとめ 日商簿記1級の独学合格には勉強慣れが必要
- 簿記1級に独学で合格するためには勉強慣れが必須
- 独学の場合、勉強時間1,000時間、勉強期間1年間を覚悟する
- 費用が安くすむことが最大のメリット
日商簿記1級は難関資格のひとつです。
正直に言うと私は独学で勉強することをおすすめはしていません。
それでも理由があって独学を目指すのであれば、その覚悟は全力で応援したいと思います。
では、今日はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました!
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