
監査法人の仕事ってつまらないって聞くんだけど本当?

OBがぶっちゃけます
- 監査は本当につまらないのか解説

<プロフィール>
- 公認会計士試験合格後、13年間監査法人に勤務
- 監査法人退職後はコンサル会社に入社
- コンサル会社を辞め、現在はとあるプライム上場会社の財務経理部長
筆者は監査法人退職後、現在はプライム上場会社の財務経理部長です。
- 公認会計士を目指すことを決意した人
- 公認会計士を目指すか迷っている人
- 公認会計士試験を勉強中の人
- 監査法人を退職するか迷っていりる人
監査をつまらないと思うことはよくある
特に近年はNISA等の影響から、投資が身近になってきていて不正会計等について世間の目がより厳しくなり、監査もどんどん厳しくなっています。
「監査が厳しくなる」とは、大抵の場合チェックリストが増えたり作る書類が増えたりと形式的な作業が多くなりがちです。

これが本当につまらないんですよ。。。
僕が特につまらないと思っていた作業をいくつか紹介します。
無駄なチェックリスト
チェックリスト自体は大事な書類だと思いますが、監査法人のチェックリストは全クライアントに対応するようにできているためとても内容が細かく、Wordでページ数が100を超えることも日常茶飯事です。
そしてどれひとつとして作業を省略することは許されません。
そしてページ数は100を超えますが、そのうちの9割近くは「該当なし」で終わることも珍しくありませんでした。
ただひたすら「該当なし」にチェックをつけるだけの作業。

あぁ、なんて不毛な作業なんでしょう。。。
ポチポチ
当たり前ですが監査調書は作成者が作成したあとにレビューをします。
レビューが終わったら「レビューしました」という記録を残します。
この記録を残すためにひたすらクリックをし続けるのです。
もちろん調書のレビューを終えたあとにクリックしますが、クリック数はクライアント1社につき100は余裕で超えます。

あぁ、やってられない。。。
不正リスクシナリオと言われても
そのため、まずは不正リスクシナリオといって「この会社ならこういう不正が起こり得る」ということを考え、「その不正が起こった場合に発見できる手続きを行おう」という流れでやるべき監査手続を決めていきます。
そして数年経つと言われるんです。

この不正対応の手続でなにか発見されたことあるの?

ないですね。

じゃあそもそもの不正リスクシナリオが間違ってるんじゃない?

考え直してよ。

えぇ・・・
「監査の目的は不正を見つけることじゃない」と基準等では明確化されてるはずなのですが、昨今はそんなことも言ってられません。
しかも手続きを見直すと、クライアントに新たな資料の提出を求めなければいけないことが多く、その説明も大変です。

いやー、オタクの会社ってこういう不正してるんじゃないかなって思うんで、それを確認したいんですよー。
とは言えないですからね。。。
監査は特に感謝されない
監査は投資家保護のためにとても重要です。
ところが監査法人が直接相対するのは被監査会社です。
そのため真の顧客である投資家が全く見えず、自分たちの仕事が本当に社会の役に立っているのか、投資家は感謝しているのか不安になります。
また、普段はなにも感謝されず不正等があったときだけ文句を言われます。

そりゃやってられないわ。。。
ぶっちゃけ監査は裁判対応
例えば会計不正が見つかっても、直ちに監査法人の監査がしっかりできてなかったとなるわけではありません。
「やるべきことはやってたけど、それでも見つけられなかった」と裁判等で立証されれば監査法人の監査が不十分とは言われないことになっています。あくまで法制度上はですが。
つまり、監査って何かあったときに裁判で証拠として出せる資料をひたすら作っているだけです。
という考え方もできなくはないのです。

いろいろな意味で間違ってますが、人間はストレスが溜まるとなんでもネガティブに捉えてしまうものです。。。
少しでも監査を面白くするために
ここまで監査のつまらなかった内容を挙げてきました。
さすがにそれだけだとネガティブな記事になってしまいますので、個人的に監査を少しでも面白くするために心がけていたことを紹介します。
効率化に命をかける
時間をかけたところで監査報酬は増えるわけじゃありません。
むしろ採算は悪くなる、メンバーの残業時間は増える、ブラッククライアントとして部内で悪い評判ばかりになる等いいことは何もありません。
しかしやるべきことをやるためにはそれなりに時間が必要です。
そのため、私は必要な作業をいかに最短工数でやるかばかり考えていました。
ただしExcelの機能を駆使するとか作業効率そのものを上げることはあまりせず、不要な作業を減らす、現状の手続きを見直して簡単な手続きに変えるという考えが中心でした。
ひどいときは監査計画で重要な勘定科目を半分以下に減らしました。さすがに怒られました。

監査作業を減らす作業は個人的に結構面白かったです。
新しい手続きの整理や重要でないというロジックがきれいにハマったときは脳汁出ました。
また監査工数が減ることは基本的にパートナーからスタッフまで全員がウェルカムですので、社内限定ですが感謝されやすい仕事だったこともテンションが上がる要因だったと思います。
経理部長や担当者と仲良くなる
当時監査法人しか知らなかった私からすれば、彼らから聞く社内事情等々はなかなか興味深かったです。最終的にはクライアントの社内の恋愛事情にまで通じるようになりました。
本記事を書いている時点で監査法人を辞めて5年経過していますが、何名かのクライアントの方々とは今でもお付き合いがあります。
私が経理パーソンになったこともあり、インボイス制度のような新しいルールができたときに「御社どうしてます?」とかを気軽に聞ける人がいるのはありがたいです。
正直事業会社経理もつまらないと思うことはよくある
隣の芝生は青いものです。
監査法人にいたときは事業会社の経理の人たちは苦労もあるとは思うけど、監査法人よりは面白そうだと思ってました。
実際に5年弱経理をやってきてわかりました。

経理だってつまらないこといっぱいあるよなと。
決算こそルーティンの極み
部長職なので、自ら仕訳を起こしたり数値を作ることはほとんどなく、基本は個別トピックの社内や監査法人との調整、チェックや承認が主な業務です。
そして個別のトピックはだいたい決算始まる前に監査法人と合意済みで、あとはその通りに処理できているかチェックするだけです。
それ以外のルーティン的なチェックや承認は見るべきポイントや気をつけるべきところの勘所はわかっているので、四半期ごとに同じことの繰り返しです。数字が違うぐらい。
特に監査法人と違い自社の業務は毎年同じなので数値の傾向も似てきます。さらに月次で数値は毎回見ているので決算なんて単なる確認作業に近いです。

もう正直飽きました。
そのため最近は決算はガンガン部下に任せつつ、自分は別の仕事をやるようにしています。たまに部内で文句出ます。
どんな仕事もつまらないことがいっぱいある
偉そうなこと言いますが、どんな仕事でもつまらない作業がいっぱいあると思います。
その中で少しでも自分が楽しかったりやりたい仕事を見つけることが肝要です。
見つけられなかった場合は転職するか、仕事はお金を稼ぐためと割り切ってしまうかのどちらかだと思います。
僕は監査のつまらない作業が面白い作業を上回ってきたこともあって転職しました。
それに当面監査法人の人手不足は続くので、どうしても監査したくなったら監査法人に帰れば良いと思ってます。帰った人ほとんど知りませんけど。
まとめ
- 監査がつまらないと思うことは日常茶飯事
- その中でもなんとか面白いことを見つける
- 面白いことが見つからないなら転職したほうが良い
監査が楽しいと思うかは人それぞれです。
公認会計士になれば監査以外の仕事もある程度はこなせます。
ですので少しでも自分が面白いと思った仕事をしたほうが絶対に人生楽しいです。
では、今回はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました!