日商簿記2級と宅建士はともに大人気の資格です。
資格の専門学校を運営するTACは2021年12月8日に人気資格のランキングを公表しましたが、簿記は堂々の第1位、宅建士は第3位と高い順位を獲得しています。
今回はそんな疑問にお答えするため、日商簿記2級と宅建士を徹底比較します!
こんな人におすすめ
- 将来に向けてなにかの資格を取ろうと考えている学生の方
- 転職に備えて、資格取得の勉強を始めようと思っている社会人の方
- 改めて就職するために資格取得の勉強を始めようと考えている主婦の方
この記事は日商簿記2級と宅建士の両方に合格している私が自信をもってお届けします!
迷ったらどっち?
どちらの資格を目指すか迷っている人には日商簿記2級の取得をおすすめします!
資格の難易度はほぼ互角ですが、就職や転職の幅の広さ・取得のチャンスの多さに加え、取得に要する費用も圧倒的に安価ですので、日商簿記2級のほうがコスパが極めて良いです!
就職に有利なのはどっち?
資格取得をあくまで手段であって、その目的は就職・転職・資格手当という方が多い・・・というかほとんどかと思います。
では、就職や転職で有利になる資格はどちらでしょう?
求人数、年収、職場で重宝されるか、オールマイティな資格かという観点から分析していきます。
結論
- 求人数や職場で重宝されるかという点では宅建士が圧勝!
- 年収は大差なし
- 日商簿記2級はどんな職種でも活用できるオールマイティな資格という点で圧勝!
では、具体的にみていきましょう!
求人数が多いのはどっち?
比較方法
いろいろな諸条件で求人数は変わりますが、今回はこの記事を書いている2021年12月30日17時頃に転職サイトで求人数を調べました。
条件を極力揃えるため、「正社員雇用」以外のフィルタは一切かけずに調べます。
比較結果
転職サイト | 検索方法 | 簿記2級 | 宅建士 |
---|---|---|---|
ハローワーク | ・正社員雇用 ・フリーワード「簿記2級」or「宅建」 | 3,109件 | 5,197件 |
Indeed | ・雇用形態:正社員 ・キーワード 「簿記2級」or「宅建」 | 17,650件 | 34,638件 |
doda | ・雇用形態:正社員 ・キーワード 「簿記2級」or「宅建」 | 956件 | 2,548件 |
求人ボックス | ・雇用形態:正社員 ・キーワード 「簿記2級」or「宅建」 | 19,525件 | 26,382件 |
単純な求人数で言えば、宅建士が圧勝でした!
「簿記はどんな業種・会社でも使える」ので、簿記のほうが有利という説明をよく見ますが、単純な求人数だけで言えば、宅建士の方が多いです。
私も実際に調べるまで簿記2級が圧勝すると思っていたのでこの結果は意外でした。
では、なぜこのような結果になるか考えてみたのですが、私見として以下の理由があるのかと思います。
- 宅建士は必置資格であり、日商簿記2級に比べて必須ないし歓迎資格として求人票で記載されることが多い
- 宅建士が必要なる資格はすなわち不動産業界ですが、不動産業界は人の出入りが激しいため求人数が多くなる
- 日商簿記2級は経理職に限定されがちですが、宅建士は宅建事務・営業・経理とすべての職種に適用できる
他の要因が思いつく方がいたらぜひ教えて下さい!
年収が高いのはどっち?
こちらは色々なサイトで記載されている情報をまとめてみました。
比較結果
比較サイト | 日商簿記2級 | 宅建士 |
---|---|---|
フォーサイト | 250万円~650万円 | 300万円~650万円 |
MS Agent | 300万円~600万円 | ー |
CPA Learning | 388万円~684万円 | - |
ユーキャン | ー | 470万円~626万円 |
資格のキャリカレ | ー | 300万円~600万円 |
実務経験・会社の規模・役職等によって異なりますが、平均的な年収で比べると日商簿記2級と宅建士は大差ないことがわかりますね!
職場で重宝される資格はどっち?
これは宅建士が圧勝です!
宅建士は必置資格と言いまして、宅建業者である会社は従業員5人につき1人は宅建士でなけれならならないと法律で決まっています。
例えば、5人しかいない会社で宅建士の人が辞めると、その会社は代わりの宅建士を大至急探す必要がありますので、宅建士の方が辞めたりしないように必然的に優遇する必要が出てきます。
また、不動産取引で必須となる「重要事項の説明」「売買契約書への記名」は宅建士しかできないため、そもそも不動産業(宅建業者)の会社は、宅建士がいないと取引ができないと言っても差し支えがありません。
対して日商簿記2級保持者は経理部に必須ということはありません。日商簿記2級を持っていないとできない仕事もありません。
日商簿記2級も優秀な資格であることは間違いないのですが、残念ながら重宝されるという点では宅建士に及びません。
オールマイティな資格はどっち?
これは日商簿記2級が圧勝です!
この世に経理がない会社は存在しません。上場会社であれば四半期ごとの決算開示は義務ですし、非上場会社であっても年1回の年度決算や税務申告は義務です。
また日常の経費の精算や請求書の発行等、どの会社でも当たり前に行われる業務は経理部が行うことが多く、当然に必要となる部署です。
また、経理職のみならず税理士事務所、会計事務所、経理のアウトソーシング会社等、日商簿記2級の知識を活用したお客様へサービス展開行っているような会社への就職や転職も期待できます。
宅建士は必置資格ですが、どうしても不動産業に限定されがちなため、残念ながらオールマイティという点では日商簿記2級には及びません。
まとめ
- 求人数は宅建士が圧勝
- 年収は大差なし
- 職場で重宝されるのは宅建士
- オールマイティな資格は日商簿記2級
不動産業を目指すのであれば宅建士がおすすめです! 間違いなく就職・転職が期待できます!
業種にこだわりがない人や不動産業以外への就職・転職を目指している人は日商簿記2級がおすすめです!
合格難易度が高いのはどっち?
続いて日商簿記2級と宅建士のどちらのほうが難しいか勉強時間・合格率・試験の受けやすさ・試験の形式から検証します。
結論
難易度はほぼ互角です!
ただしいつでも受験可能という日商簿記2級の特質から日商簿記2級の方が合格しやすいです。
勉強時間が多いのはどっち?
色々な資格サイトで比較してみます。
勉強時間にそこまで大きな違いはないですが、日商簿記2級の方が若干多いですね。
ちなみに私は宅建士の試験は132時間の短時間で合格しています!
詳細な勉強時間やオススメの勉強方法も別記事にしていますので、そちらもぜひご覧ください
合格率が高いのはどっち?
ここでは過去5年間の合格率をみてみましょう。
実施年 | 日商簿記2級 | 宅建士 |
---|---|---|
2021年 | 24.0%(6月) 8.6%(2月) | 17.9%(10月) |
2020年 | 18.2%(11月) 中止(6月) 28.6%(2月) | 13.1%(12月) 17.6%(10月) |
2019年 | 27.1%(11月) 25.4%(6月) 12.7%(2月) | 17.0% |
2018年 | 14.7%(11月) 15.6%(6月) 29.6%(2月) | 15.6% |
2017年 | 21.2%(11月) 47.5%(6月) 25.0%(2月) | 15.6% |
宅建士は15%~18%弱と安定していますが、日商簿記2級は最低が8.6%、最高が47.5%と振れ幅が大きいです。
これは宅建士が相対評価であることに対して、日商簿記2級は絶対評価であることが理由です。
上位●%が合格という形で合格点を決める。
合格率は毎回大きく変わらない。
事前に問題ごとの配点が決まっている。
合格率は試験の難易度によって大きく変わる
そのため、特に日商簿記2級は言い方が悪いですが試験の当たり外れが激しく、合格率という点ではどちらが難しいとは言いづらいです。
試験を受けやすいのはどっち?
日商簿記2級の方が圧倒的に受けやすいです!
- 日商簿記2級:紙面 年3回、ネット試験 いつでも
- 宅建士:年1回(ただし2020年、2021年はコロナの影響で年2回)
日商簿記2級はネット試験(CBT試験)が導入されているため、いつでも受験が可能です。
極端ですが、受かるまで毎日受験し続けることも可能です。
チャンスが多いということはすなわち受かりやすいということに他なりません!
試験形式が簡単なのはどっち?
これは宅建士試験の方が簡単です。
- 日商簿記2級:ほぼ記述式(ネット試験の勘定科目のみ選択式)
- 宅建士:マークシート式(4択)
極論ですが宅建士はわからない問題でも4分の1(25%)の確率で正解可能です。
まとめ
比較方法 | 合格しやすいのは? | 日商簿記2級 | 宅建士 |
---|---|---|---|
勉強時間 | ほぼ互角 | 300時間~500時間 | 300時間~400時間 |
合格率(最低5年) | ー(判定不能) | 最低8.6% 最高47.5% | 13.1%~17.9% |
試験の頻度 | 日商簿記2級 | 紙面年3回 ネット試験はいつでも | 年1回 |
試験形式 | 宅建士 | 記述式 | マークシート |
試験の難易度はほぼ互角ですが、日商簿記2級の方がいつでも受けられるという強みがあり、チャンスが多い分合格はしやすいです!
費用がかかるのはどっち?
結論
宅建士のほうが圧倒的に高くなります。
予備校代や受験料は大差ないのですが、合格後にかかる費用が高いためです。
テキスト代が高いのはどっち?
独学の人はテキスト代が受験にかかる主な費用かと思います。
日商簿記2級も宅建士も各社色々なテキストが出ているため、amazonで調べて代表的なテキストや問題集を並べてみます。
日商簿記2級
宅建士
日商簿記2級のほうが一見テキストが安く見えますが、商業簿記と工業簿記に別れているので両方の購入が必須です。両方合わせて3,000円ほどですね。
問題集が若干宅建士のほうが高いですが、1,000円程度の違いですのでほとんど変わらないですね!
予備校代が高いのはどっち?
独学ではなく、予備校などのスクールに通う方も多いでしょう。
ここでは代表的なTAC、LEC、ユーキャンの講座の代金をみてみましょう!
予備校等 | 日商簿記2級 | 宅建士 |
---|---|---|
TAC | 78,300円~107,300円 | 115,000円~206,000円 |
LEC | 56,100円~86,900円 | 126,500円~143,000円 |
ユーキャン | 49,000円 | 58,000円 |
選ぶ予備校等によって金額に差異はありますが宅建士のほうが予備校代は高くなる傾向にあるようです。
受験料が高いのはどっち?
日商簿記2級 | 宅建士 | |
---|---|---|
受験料 | 4,720円 | 7,000円 |
事務手数料 | (ネット受験のみ)550円 | ー |
2,000円ほどですが宅建士のほうが高いです。
なおネット受験ではなく、紙面の受験であれば事務手数料はかかりません。
合格後の費用が高いのはどっち?
日商簿記2級 | 宅建士 | |
---|---|---|
登録実務講習 | 0円 | 12,000円~20,000円 |
資格登録手数料 | 0円 | 37,000円 |
宅建士証交付手数料 | 0円 | 4,500円 |
合計 | 0円 | 53,500円~61,500円 |
最初に書きましたが、合格後の費用が宅建士はかなり高いです。。。
さらに宅建士は5年に1回更新の手数料16,500円がさらにかかります。
また登録時には住民票等の法的な書類が必要なため、必要書類の発行手数料もかかります。
宅建士は国家資格の士業のため、どうしても登録に関する手数料がかかってくるんですね。。。
余談ですが、公認会計士の登録費用は約15万円です。。。
まとめ
- テキスト代はほとんど変わらない
- 予備校代は宅建士のほうが高い
- 受験料は若干宅建士のほうが高い
- 登録に要する費用は宅建士のみがかかる。合計5万円オーバーと高額
テキスト代以外は、すべての項目で宅建士の方が高くなる結果でした。
費用だけで取得する資格を決めることはないと思いますが、安くすむに越したことはないですよね。
ダブルライセンスのシナジーはある?
結論
ないです。
日商簿記2級からさらに上を目指そうとすれば、日商簿記1級・税理士・公認会計士等があります。
宅建士からさらに上を目指そうとすれば、マンション管理士・司法書士・行政書士・不動産鑑定士等があります。
それぞれの上位資格をみても分かる通り、日商簿記2級と宅建士はあまりリンクせず両方の資格をとってもあまりシナジーが働かない資格です。
ただし、2つだけ例外あります。
例外その1
例外その1は不動産業の経理部に所属場合です。
不動産業界の経理部であれば、宅建士で得た知識と日商簿記2級で得た知識の両方を活用することができます!
私も不動産業と関わることが多い会社の経理部に勤め始めたことから宅建士の資格を取りました。
例外その2
例外その2は簿記2級にとどまらず、公認会計士や税理士を目指す場合です。
公認会計士として監査法人に所属した場合、色々な業種の監査を担当することになります。
担当する会社は不動産業もあるでしょうし、不動産業を担当しなくても、担当している会社が自社ビルの購入や売却といった不動産売買取引が行われれば宅建の知識は役立ちます。
不動産業以外でも多店舗展開を行っている小売業は新規店舗や店舗撤退は不動産の賃貸借や売買と密接に関わってきますので宅建の知識を使うことは実は少なくないです。
税理士も同じく顧客が不動産業でなくても、不動産を所有していれば不動産の売買取引や不動産に絡む税金についての知識は当然に求められるため、宅建とのシナジーは高いです。
他にも相続税と不動産は切っても切れない関係にありますので、相続税関係の業務をする場合も宅建士との知識とシナジーがあると思います。
まとめ
- 日商簿記2級の魅力は職種を自由に選べる点(宅建士は不動産業等に限定されがち)
- 宅建士は求人数が多く、職場で重宝されることは間違いなし
- 試験の難易度はほぼ互角。ただし受験回数の多さから受かりやすいのは日商簿記2級
- 費用面では日商簿記2級の方が圧倒的に安い。宅建士は登録に要する費用が高い
- 両方の資格を取るシナジーはほぼない。ただし例外あり
今回は日商簿記2級と宅建士を徹底比較しました。どちらも素晴らしい資格ですが、両方の資格を取る意味合いが薄い資格なので、どちらを目指すかの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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